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事前知識ナシの島に行き、船の最終便に乗り損ねたデジタルデトックス旅の悲劇

事前知識ナシの島に行き、船の最終便に乗り損ねたデジタルデトックス旅の悲劇

「いやぁ、最後はちょっと大変だったけど、すごくいい流れだったね」

予定の時刻より早く、帰りの船が出る港にたどり着いた私たちは、その日の "デジタルデトックス旅" をのんびり振り返っていた。

「スマホを使わないことに不便を感じながらもトントン拍子に進んだ前半から、調子に乗って別の島に行ったら何もなくてスマホの必要性を痛感する......っていうオチがあって。うん、これなら記事にも上手くまとめられそうだわ」

そのときは2人とも、まだ気づいていなかったのだ。

自分たちがそのとき、大きなミスをおかしていたことに。

旅のはじまり

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最近、用もないのにSNSを開き、無目的な時間を過ごしては後悔するループにはまっている。

『デジタルデトックスのすすめ』という本によれば、どうやら私はネット依存になりかけているらしい。依存に陥るとスマホを手放すことが難しくなり、そうでない人と比較すると思考の質が下がるという。そしてそれを解決するには、スマホを使わない時間を作るーー、つまり「デジタルデトックス」をするといいそうだ。

ちょうど広島へのひとり旅を控えており、旅の最終日には何も予定がなかった。帰りの飛行機は19:25発なので、夕方までゆっくりする時間がある。

私はその日、スマホを使わずに旅をする "デジタルデトックス旅" をすることにした。

前日22:00 宿泊していたゲストハウスで情報収集

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せっかくなら情報収集もオフラインでやろうと思い、前日の夜、宿泊していたゲストハウスのバーで聞き込み調査をしてみた。

候補に上がったのは、大崎下島(おおさきしもじま)の「御手洗(みたらい)」。重要伝統的建造物群保存地区にも選ばれた、古い町並みで知られる海辺の町だ。


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ゲストハウスからは、2駅隣の「広(ひろ)」という駅からバスが出ていて、トータル2〜3時間で着くとのこと。もらったパンフレットを見ると、見どころもたくさんあるようだし、行って手持ち無沙汰になることもなさそう。

よし。

明日の目的地は、御手洗にしよう。


私は、電車の時刻を調べるため、さっそく呉(くれ)駅へ時刻表を取りに行った。

9:00 デジタルデトックス開始

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朝9時。デジタルデトックス旅のはじまりだ。

以前知人がやっていたのを真似て、SNSや連絡ツールのアイコンをデジタルデトックス仕様に変えてみた。これでみんな、緊急の要件でない限り連絡を控えてくれるはず。


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そして、スマホの電源はオフに。

少しドキドキするものの、なかなかの開放感である。

9:05 呉を出発

9:09発の電車に乗るため、まずはゲストハウス最寄りの呉駅へ。しかし......


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オーマイガ。次の電車の発車時刻まで、約30分もある。

朝食をとらずに出てきてしまったので、この時点でお腹が空きはじめていた。漫画アプリもゲームもSNSもない状態で、あと30分も空腹を耐えられる気がしない。

祈るような気持ちで改札内を歩き回ってみたものの、アナログ砂漠のオアシス「売店」を見つけることはできなかった。

9:50 バス停のある広にて、情報収集

9:36の電車に無事乗り込み、わずか10分ほどで「広(ひろ)」に到着。

駅の窓口でバス停の場所を教えてもらって行ってみると、すぐに御手洗行バスの時刻表を見つけることができた。が......、


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一番出発が早い便で「11:20」。このままでは、この場所で1時間半足止めをくらうことになってしまう。

ただ、このバス停にはいくつかの路線が通っている様子。行き先に「御手洗」と書いていなくても、御手洗を通過するバスはあるかもしれない

そう思って、通行人に尋ねてみると......、


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重要情報ゲットぉぉぉ! ためしにバス停に貼ってあった沖友天満宮(おきともてんまんぐう)行バスの時刻表を見てみると、10:36の便があり、時間も悪くない。

私は、このバスに乗って御手洗へと向かうことにした。

10:36 御手洗行バスに乗車

広島に住む友人・よーこが撮影を手伝ってくれるというので、広駅で合流(前日の夜に、待ち合わせの連絡を済ませていた)。ここからは一緒にデジタルデトックスをすることに。


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広から御手洗までは、バスで約1時間半の道のり。その間も、もちろんスマホは使わない。

でも、海沿いを走るバスの車窓を眺めていたら、時間が経つのはあっという間だった。

12:05 御手洗

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12:05、御手洗に到着。ここまでかなり順調に来れたんじゃないだろうか。

でも、肝心なのは往路より帰路。飛行機に乗り遅れちゃかなわないので、まずは帰りの足を確認するため、バス停近くにある観光案内所へ。


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案内所のスタッフによると、御手洗から徒歩15分の「大長(だいちょう)」から、「竹原(たけはら)」行の船が出ており、そこからタクシーを飛ばせば30分ほどで空港に着くとのこと。

船の時刻表を見せてもらったところ、18:04に竹原に着く船があったので、それに乗れば余裕で19:25のフライトに間に合いそうだった。




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御手洗は、町の各スポットにある地図やパンフレットに情報が綺麗にまとまっていたので、スマホがなくてもさほど困らなかった。




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私たちは、海の見えるカフェで美味しいランチを食べ、


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古い町並みを散策し、1937年に建てられた元映画館の劇場や、伊能忠敬の測量図が飾られた古民家、気の利いたおみやげや雑貨が売っているお店などを楽しみ、


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見晴らしのいい場所に行き景色を堪能し、そして......、




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主要なスポットは行き尽くしたものの、その時点で時刻は14時半。

船が出発する17:20まであと3時間もあった。


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観光案内所に戻り、ほかに見るところはないか聞いてみると、「ないねぇ」との回答。

ダメ元で、みやげ店でも尋ねてみたところ、「大崎上島(おおさきかみじま)」に行く船がまもなく出ることが分かった。しかも、到着の1時間後には竹原行きの船が来るらしく、予定通りの時刻に帰ることもできそう。




そんなわけで私たちは、旅の時間をフルに有効活用するべく大崎上島へ向かった。

16:15 大崎上島へ

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しかし、大崎上島へ向かった私たちを待ち受けていたのは、甘くない現実だった。




船が到着したのは、大崎上島の明石(あかし)という港。

そこに広がっていたのは......


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あれ? 港って島にとっての駅みたいなもんじゃないの? もっと人気があるもんだと思ってたよ?

とはいえ、とにかく誰かに話を聞かないとこの島の情報がまったくないので、ターミナルで話を聞いてみることに。

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「今から1時間で見れるとこ? ないと思いますよ......」


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ただ、看板を見ると私たちが今いる「明石港」の右のほうに、「沖浦」の文字を発見。


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ここに来る前にもらった帰りの船の時刻表を見てみると、沖浦港は、私たちが乗る予定の船の、次の港。

このまま何もせずここにいるよりは、ちょっとでも動いたほうが面白いものに出会えるかもしれない。

「20分歩いて誰にも会えず、どこにも着く気配がなかったら引き返す」というルールを決めて、私たちは沖浦に向けて歩き出した。





それにしても...

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住宅が立ち並ぶ道を、強い日差しに照りつけられながらひたすら歩き......




そしてついに、

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17:10 沖浦港

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ターミナルには電気がついておらず、どうやら無人のよう。でも、地図と照らし合わせると、ここが沖浦港で間違いなさそうだ。

坂口

いやぁ、最後はちょっと大変だったけど、すごくいい流れだったね。

よーこ

どんな風に記事、まとめるんですか?

坂口

スマホを使わないことに不便を感じながらもトントン拍子に進んだ前半から、調子に乗って別の島に行ったら何もなくてスマホの必要性を痛感する......っていうオチになる感じかな。

よーこ

へぇ。読むの、楽しみだな〜〜!


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坂口

あ、船が来たみたい。行こ。


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よーこ

え、あれ? 戻っていく......?

坂口

え? んなわけないでしょ。

よーこ

今、時間は?

坂口

17時36分。

よーこ

じゃあやっぱりこれですよ。








坂口

...え!?

よーこ

おーい! おーい!!!!

坂口

乗ります!!! 乗るよーーー!!!



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坂口

えっ、うそでしょ(笑) えーーー!? なんで!?

よーこ

まずいですよ、帰れなくなる。


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よーこ

え、......!!! 見てこれ、「5分前に桟橋で待ってて」って書いてある!!

坂口

ほんとだ......!








おじさん

おーい、姉ちゃんたち、船乗れなかったんか!?


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声をかけてくれたのは、近くで釣りをしていたおっちゃんだった。どうやら私たちが船に向かって叫んでいるのを見て、事態を察して助けにきてくれたらしい。

おじさん

行き先はどこや?

よーこ

竹原です! 19時には空港に着かなきゃいけなくて......!!

おじさん

竹原やったら、垂水(たるみ)か白水(しろみず)から船が出とるんじゃないかな。車で出れば間に合うはずだよ。

坂口

車か......!




謎の人物

俺、送って行きましょうか?


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だ...だれだか分からないけど親切なお兄さぁぁぁん!!!!!!

おじさん

おう、送ってったれ!!!

坂口

い......いいんですかっっ!!? ぜひお願いしたい......!!!!

謎の人物

大丈夫だよ、俺、特に予定ないから。早く乗って!!

坂口

はいっっ!!!!!





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トシさん

俺はトシ。よろしく。何時までに着けばいいんだっけ? 調べてもらってもいい?

よーこ

(私の顔を見て)スマh...

坂口

大丈夫、そんなこと言ってる場合じゃない。


41.png ▲これ以上人に迷惑かけるわけにいかないので、デジタルデトックスは解除した。

まるでドラマのようなタイミングで私たちの眼の前に現れ、見ず知らずの私たちを助けてくれたのは、筋骨隆々のお兄さん。普段は船に関わる仕事をしていて、3日前からこの島での造船の仕事に赴任され、滞在しているそうだ。

今日は休日で、観光がてら島をぶらぶら巡っていたのだという。

坂口

実は私たち、今日、スマホを使わない旅ってのをしてて......。東京に帰るフライトの時間に間に合うように、さっきの船で帰る予定だったんです......。

トシさん

なんか港でボーっとしてたら、2人が飛んだり跳ねたり手振っって叫んだりしてるんだもん。笑っちゃったよww

坂口

ほんっとすみません。

そして......今度こそついに......

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坂口

ありがとうございます!!!(泣)

トシさん

大丈夫? 間に合う?

坂口

はい!ギリギリですがなんとか! このご恩を無駄にしないためにも、こっからはスマホを使って確実に空港にたどり着きます。

旅の終わり 


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こうして、デジタルデトックス旅は、止むを得ず途中で終了してしまった。


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でも、方法も道具も、本来、人のためにあるものであるはず。


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必要だと思ったら使えばいいし、疲れたなと思ったら休めばいいのだ。


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でも、「慣れ」はいつも、自分の心が本当に必要としていることを忘れさせてしまうから、たまには不便を楽しむくらいが、もしかしたらちょうどいいのかもしれない。


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スマホでネットを使いたいと思った回数...合計8回

  • 御手洗への行き方と時間を調べたい
  • 電車の待ち時間の暇をつぶしたい
  • 御手洗に向かうバスの時間を調べたい
  • 時間を有効利用するために、ほかの島へいける可能性を調べたい
  • 島の見どころを検索したい
  • 沖浦港までの所要時間を知りたい
  • 大崎上島の見どころを検索したい
  • 明石港〜沖浦港までの所要時間を知りたい
  • 白水港から出ている船の発着時間を検索(使った)
  • 連絡先の交換(使った)

現地の人と会話した回数...合計28回

  • バーで情報収集×4人
  • 呉の駅員さんに事情を説明し、改札を通してもらう
  • 広駅の窓口で、御手洗行きバス停留所の場所を聞く
  • 広の通行人に、バスの行き先について尋ねる×2
  • 広駅の窓口で、バスの時刻表をもらう
  • 御手洗の観光案内所で、帰りのルートについて尋ねる
  • 御手洗の人に道を尋ねる×3
  • 御手洗のカフェの店員さんに町の規模感について尋ねる
  • 御手洗のカフェで隣の席に座った人と雑談
  • 御手洗の観光案内所に、観光情報について相談
  • 御手洗の土産店で別の島に行く船について相談
  • 明石港のターミナルで、観光情報について相談
  • 大崎上島の人に道を尋ねる×4
  • 道をおしえてくれたおじちゃん
  • トシさん

インターネット使うなら「BIC SIM」

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なんだかんだいってもやっぱり電波があるのはありがたい。調べたいものがあればすぐに調べられるし、もしも格安でインターネットを使うならビックカメラの格安SIM、BIC SIMがオススメ。





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