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スマホを見るベストな姿勢って? スポーツ医監修「スマホしぐさ」研究

スマホを見るベストな姿勢って? スポーツ医監修「スマホしぐさ」研究

いまや現代人の生活に欠かせないアイテムとなったスマートフォン=スマホ。通学・通勤の途中はもちろん、作業の空き時間や食事中、さらにはトイレやベッドの中でも手にしてしまうという人は多いのではないでしょうか。

「スマホを操作するときの姿勢」のアンケートでは、男女ともに「座って」が多いものの、「歩きながら」「寝て」という回答も少なからずあり、利用者が思い思いの姿勢でスマホを利用していることが分かります。また、「スマホを操作するときにやりがちな姿勢」では、「良い姿勢をキープしている」と答えた方は25%以下。ほとんどが「猫背」や「うつむいた状態」になりがちだと自覚しているようです。姿勢が悪くなると分かりつつ、やっぱり見てしまうスマホの魔力。しかし、このままではいずれ首の痛みや肩こりに悩まされるのは時間の問題でしょう。

スマートフォンを、あなたはどのような姿勢で操作する事が多いですか?の回答

スマートフォンを操作する際、あなたがついついやってしまう姿勢はありますか?の回答 出典:「スマートフォンの使用と姿勢」に関するアンケート

そこで今回は、長時間スマホを見ても疲れにくい姿勢を大研究。医学的に理想的な姿勢を、粋でオシャレな「江戸しぐさ」になぞらえて「スマホしぐさ」と称し、シチュエーション別に紹介していきます。ご教授くださるのは、著書『医師が教えるゼロポジ座り 疲れない、太らない、老けない』で座るときの正しい姿勢を提唱している整形外科医・中村格子先生です。

中村格子先生
整形外科医 医学博士・スポーツドクター。Dr. KAKUKO スポーツクリニック院長。よこはま健康づくり広報大使。日本オリンピック委員会専任メディカルスタッフ(体操競技)

【スマホしぐさ①】立っているときは――「からだ一文字」

通勤通学の電車やバス、待ち合わせの集合場所などでは、立った状態でスマホを見ることが多くなります。立っていると手元のスマホを覗き込むような姿勢になるため猫背になりやすく、首や肩に負担がかかりがち。また、無意識のうちに片足に重心を乗せる「やすめの姿勢」になっている方も多く見られますが、これを長時間続けていると背骨や骨盤にも歪みが生じてしまいます。

こうした負担を防ぐスマホしぐさ、それは「からだ一文字」です。まず、足は肩幅ほどに開き、親指の付け根、小指の付け根、かかとの3点に体重が乗るように意識します。そして、身体は無理にそらさず、横から見たときに、耳・肩の先・ウエストの真ん中・骨盤の少し出ているところ(大転子)・くるぶしが一直線、つまり「一」という文字のように まっすぐ並ぶようにして立ちましょう。スマホを見るときはこの姿勢を保ち、スマホをもつ手元は肩をすくめずに手が挙げられるくらいの胸の前方持ってくると疲れにくいと言われています。

立ちスマホは「からだ一文字」

中村先生からのスマホしぐさワンポイント

スマホをもつ腕が疲れて下がってくると、同時に目線もさがってしまい、自然と前傾姿勢になりがちです。この写真も、若干前傾姿勢ぎみですね。自分が思ったより少し頭を引くとまっすぐになると思いますよ。耳の位置が一文字より前方に出ないように軽くアゴをひき、目線と手元が下がらないよう注意しましょう。

【スマホしぐさ②】座っているときは――「ゼロポジこしかけ」

デスクワークの合間や食事の後などに、イスに座った姿勢でスマホを操作することも多いでしょう。だらしなく足を開き、まるめた背中を背もたれに預け、アゴを前に突きだした姿勢でポチポチといじっている方、いませんか? 確かにラクな姿勢ではありますが、背骨や首にかかる負担が大きく、背もたれに体重をかけすぎると血流も滞りがちに。また、まるめた背中が胸部を圧迫して呼吸が浅くなり、そのせいで疲れやストレスを感じやすくなってしまいます。
良い座り方と聞くと、ひざと股関節の角度を90度にする「直角座り」をイメージされるかもしれません。しかし、この座り方は体幹の筋肉が鍛えられていないと骨盤をまっすぐに保つことができず、さらに腰がやや反り気味になるため腰や背骨にも痛みが出やすくなるのです。

そんなときにオススメしたいスマホしぐさは「ゼロポジこしかけ」。骨格に負担がかかっていない状態のことを、医学的に「ゼロポジション」と呼んでいます。ゼロポジこしかけとは、その名の通り身体に負担のない究極の座り方なのです。
やり方は、写真のようにひざと股関節を110度程度に開き、骨盤の上に腰椎がまっすぐに乗っていることを意識して座るだけ。こうすると腰への負担がなくなり、腰椎の先にある脊椎や頭部もきちんと身体に乗るため、首や肩への負担も軽減。長時間座っていても疲れを感じにくくなります。この姿勢を保ったまま、太ももの長さの半分と目線を結んだ位置よりやや先にスマホがくるように持つのがベストです。

座りスマホは「ゼロポジこしかけ」

中村先生からのスマホしぐさワンポイント

座りながらスマホを操作するときも、首の動かし方がポイントです。頭をまっすぐに起こしたまま、あごを動かせる範囲で下を向きます。この状態で視線が届く範囲内にスマホをの位置を持ってくると、首や肩に負担がかからないでしょう。スマホの位置が下すぎると、頭を前に出して首を倒すことになり、肩や首に負担が掛かるので気をつけてください。

【スマホしぐさ③】寝転がっているときは――「寝転び御法度」

一日の終わりは、ベッドに入ってスマホをポチポチしながら眠りに落ちる......。そんな至福のひとときも、姿勢が悪ければ後々ツライ痛みやこりに悩まされる原因になるかもしれません。寝転がっているときに最適なスマホしぐさは、仰向け? うつぶせ? それとも横向き?

正解は......「寝転び御法度」。そもそも横になってスマホを見ることが、身体にとってはNG行為であるようです。寝転んだ状態でのスマホは首に負担がかかりやすく、スマホまでの距離も保ちにくいため、首だけでなく目にも負担がかかります。また腕に不自然な力がかかることも多いため、肩や腕の痛みにつながることが多いようです。どんな姿勢でも健康に悪いことは間違いありません。
また、スマホが発するブルーライトには脳を覚醒させる作用があると言われていますので、就寝前にスマホを見ることは避けた方が良いでしょう。
「どうしても寝転んでスマホを見たい!」という方のために、最近ではスマホを固定できる「寝スマホ専用スタンド」なども市販されているようです。使用すれば、スマホを持つ腕や肩の負担は軽減できるかもしれません。

寝ながらスマホは「寝転び御法度」

中村先生からのスマホしぐさワンポイント

体の柔らかさにもよりますが、うつ伏せでも横向きでも身体への負担はかかります。仰向けは比較的首への負担が少ない姿勢ですが、身体の健康を考えた場合は使用時間を最小限にした方が良さそうです。スマホは身体を起こして見るのが良いでしょう。

【スマホしぐさ④】スマホ首を予防するなら――「串刺しヘッドノッド」&「ロボット持ち」

「スマホ首」は、スマホの使い過ぎが原因とされる現代病のひとつ。下を向いて首を突き出す姿勢を取ることで、首の痛みや肩こり、頭痛やめまいなどさまざまな症状が出てくるというものです。長期に渡って続けると頸椎(首の骨)に本来あるはずの緩やかなカーブが徐々に失われることから、別名"ストレートネック"とも呼ばれており、男性より筋肉量の少ない女性は特になりやすいと言われています。このスマホ首を予防するには、上記で紹介した3つのスマホしぐさに、「串刺しヘッドノッド」&「ロボット持ち」を組み合わせて使うと効果的です。

「串刺しヘッドノッド」は、中村先生が提唱する正しい首の動かし方。図のように左右の耳を横から串刺しにしたようなイメージで耳の位置を固定し、うなずくようにあごを上下に動かすことで、スマホを見るときに首や肩にかかる負担をなくします。イメージが掴みづらい場合は、背中を壁にピッタリとつけ、壁から頭を離さずにうなずくように頭を動かして練習してみましょう。これを繰り返すと、自然に串刺しヘッドノッドができるようになります。
そしてスマホの位置は、なるべく視野の中央(垂直視野と水平視野の0度付近)へ。「串刺しヘッドノッド」であごを上下に動かすときは、常にスマホが視野の真ん中にくるようにします。 コツはスマホをもつ腕と頭の位置を固定し、連動させること。まるでロボットのようなカクカクとした動きになりますが、この「ロボット持ち」を心がけることで首が常にゼロポジションになり、身体にかかる負担は最小限になります。

串刺しノッドヘッド

中村先生からのスマホしぐさワンポイント

目とスマホの距離は、視力にもよるので一概には言えませんが、20~30cm程度は離した方が良いでしょう。食事や外出時にいつもスマホを見るくせをつけてしまうとなかなか手放せず、特にゲームをしていると長時間画面を見てしまう人も多いようです。一回の視聴時間はなるべく短く、やむを得ず長時間使用する場合は、時々遠くを見たり目を閉じたりして首と目を休ませるようにしてください。

まとめ

ゲームやSNSに夢中になるあまり、自分の健康をなおざりにしてしまうのは野暮というもの。あなたも「スマホしぐさ」で、身体に優しいスマホライフを始めてみませんか? 電車の中やオフィスでさりげなく実践すれば、あなたも今日から粋な"スマホ人"になれるかも!

監修/中村格子
文/ほそいちえ