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スマホをずっと見ていると目が霞む......それって「スマホ老眼」かも?眼科医にきく主な症状とケア方法

スマホをずっと見ていると目が霞む......それって「スマホ老眼」かも?眼科医にきく主な症状とケア方法

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、今年4月に政府が発表した緊急事態宣言。 「STAY HOME」の号令のもと、3つの"密を"避けるためのさまざまな工夫が話題を呼びました。

中でも私たちの生活を一変させたのは、オンライン会議やオンライン飲み会、オンライン帰省などといったインターネットを介する新しいコミュニケーションの形。ネット環境さえあれば誰でも簡単にできることから盛んになり、その流れは緊急事態宣言が解除された今も定着しつつあります。

しかし、それと同時に問題になりつつあるのがスマホ(スマートフォン)やパソコンの長時間利用。ことあるごとに小さなモニターを見る生活に、それまでに体験したことのないような目の疲れを感じている方も多いのではないでしょうか?

 そこで、今回はそんな"スマホやパソコンによる疲れ目"にフォーカス。東京・代々木上原にある「みさき眼科クリニック」の院長・石岡みさき先生に、具体的な目の症状やケア方法について伺いました。


石岡みさき先生の画像

「みさき眼科クリニック」の院長・石岡みさき先生

今回お話を聞いた「みさき眼科クリニック」の院長・石岡みさき先生。眼科専門医、医学博士。「ジェネラリストのための眼科診療ハンドブック」「点眼薬の選び方」「ジェネラリストのための症候からみる眼疾患」など著作多数。

スマホやパソコンを見ていて目が霞んできた......それってスマホ老眼かも?

―スマホやパソコンの画面を長時間見ていると、どんな症状が出るのでしょうか?

石岡みさき先生(以下石岡先生):基本は「疲れ目」と呼ばれる症状です。まぶたが重くなったり、目の奥に痛みを感じたり。画面に集中しているとまばたきの回数が減るので、目の表面が乾いてドライアイの症状を訴える方もいらっしゃいますね。あとは、目のピントが合いにくくなってしまうこともあります。

―「ピントが合いにくい」というのはどんな状態ですか?

石岡先生:スマホなどをずっと見続けたあとにふと顔を上げると、視界がぼやけて周囲が見えにくくなるのです。いわゆる老眼の症状とよく似ているので「スマホ老眼」とも呼ばれています。

―そのとき、目の中では何が起こっているのでしょうか?

石岡先生:私たちは目の中にあるレンズ(水晶体)の厚みを変えることで近くや遠くにピント合わせをしています。ピントを合わせる力を「調節力」と呼んでいるのですが、老眼は歳を取って調節力そのものが衰えてしまった状態。スマホ老眼は調節するための筋肉が疲労して、一時的にピント合わせがうまくいかなくなった状態です。

―一時的ということは、ひと晩寝たら治ってしまうのでしょうか?

石岡先生:疲れは積み重なって起こるものですのでひと晩で完璧に治るとは言い切れません。ひと晩で戻ればただの疲れで、戻らなければ眼精疲労という病気だと説明する眼科もあるようですが、私はそう割り切れるものでもないと思っています。そうですね、たとえば自粛生活でスマホやパソコンばかりを見ていた方が通常の生活に戻り、だんだん症状が気にならなくなれば、それは一時的なもの、という感覚でしょうか。

―そのまま本当の老眼になってしまうことはありませんか?

石岡先生:それはありません。老眼はあくまで年齢的なものですから、歳をとれば誰でもいつかは100%発症します。ピントが合わなくなるという共通点はありますが、目のピント調節力が完全に衰えて元には戻らないのが「老眼」、一時的なものでいずれ回復するのが「スマホ老眼」という認識でよろしいかと思います。

スマホ老眼とは?

至近距離でスマホを見続けることによって、目のピントを近くや遠くに合わせるために使う「毛様体筋」が凝り固まってしまい、一時的にピント調節がうまくできなくなる症状です。視界がぼやけて近くや遠くが見えづらくなる状態が老眼に似ていることからこのように呼ばれています。

スマホ老眼の説明の画像

スマホやパソコンが発するブルーライトが目に悪いのは本当?

―スマホやパソコンを見続けると、なぜドライアイやスマホ老眼などの症状が起こるのでしょうか?

石岡先生:手元やデスクの上などの至近距離を、長時間見続けることによる影響です。近くを見る作業は遠くを見るよりも強い調節力を必要とするので、どうしても目に大きな負担がかかります。読書をするときも至近距離を見ますが、紙と違ってスマホやパソコンからはブルーライトが出ているので、それがさらに目を疲れやすくすると言われていますね。

―ブルーライトは目に悪いと聞いたことがあります。

石岡先生:ブルーライトは「散乱する光」。光の波長が散乱しているので、まぶしさやちらつきのもとになることが分かっています。太陽光や蛍光灯の光にも含まれていますが、スマホやパソコンからはブルーライトが多く出ていると言われています。また本来日中に浴びているはずの光なので、体のリズムも乱すという報告もあります。実は私も、今年のゴールデンウィークにずっとパソコンで映画を見ていたら、夕方頃から急に目が見えづらくなってしまって。「おかしいな......あ、そうか!」ということがありました(笑)。

―眼科の先生でも気づかずにブルーライトの影響を受けてしまうのですね(笑)。最近はさまざまなレンズメーカーからブルーライトをカットできるレンズが出ていますが、効果はあるのでしょうか?

石岡先生:確かに「まぶしさが抑えられて楽になった」という方はいらっしゃいます。ただ個人差がありますし、一人ひとりが感じているまぶしさや目の疲れは数値化できるものではありません。まぶしさを抑えるなら、釣りをする方がよく使う偏光レンズでもよいかもしれませんね。いずれにしても、実際に試してみて疲れにくいと感じるなら使い続けるのもアリだと思います。

―ブルーライトカットレンズや偏光レンズを試しても効果が得られないときは?

石岡先生:目の疲れを訴えて来院する患者さんの中には、実はメガネやコンタクトの度数があっていなかったという方も多いのです。ここ数カ月の自粛生活でほとんど室内にいるにも関わらず、外出用の度数が強い眼鏡を使い続けているという方は一度調べてみたほうがよいでしょう。40歳を過ぎている方なら、本当の老眼の可能性も考えたほうがいいですね。

ブルーライトとは?

ブルーライトは、赤から紫まである可視光線(目で認識できる光)のうち青い光のこと。紫外線の次に波長が短いため光が散乱しやすく、まぶしさやちらつきの原因になります。また、角膜や水晶体で吸収されずに網膜まで達するため、浴び続けると私たちの目にダメージを与えるとも言われています。

ブルーライトの説明の画像

スマホやパソコンで疲れ目にならないケア方法は?

―目の疲れを感じたときに、自分でできるケア方法はありますか?

石岡先生:特に効果的と言われているのは目の周辺を温めること。ピントを合わせる筋肉をリラックスさせるだけでなく、まぶたの上にある分泌腺から眼球の表面を守る脂の分泌を促す効果もあります。温めるものは、市販のアイマスクでもレンジでチンしたタオルでも何でもよいのですが、温めるタイミングは仕事の合間ではなく、仕事が終わった後や寝る前などが良いですよ。

―まぶたを押したり揉んだりする方もよく見かけますが。

石岡先生:疲労した目の筋肉に直接触れるわけではないので効果のほどはなんとも......。それなら、眉毛の内側辺り、骨のふちにある「攅竹(さんちく)」というツボを押すほうが効果はあると思います。間違っても眼球は押したり揉んだりしたらダメですよ。

―ちなみに、一般的な眼科では疲れ目で来院した方にどのような治療をするのでしょうか?

石岡先生:よく使われているのは赤い目薬ですね。赤は、疲れ目に効果のある「ビタミンB」の色。薬局に並んでいる"疲れ目に"と書かれた目薬はビタミンBが入っているから大体赤い色をしています。市販薬でも処方薬と同じ濃度の目薬があるので利用されてもいいでしょう。ただ、目の調節力を回復する目薬は自己判断がしにくいので、眼科へ行って処方してもらうことをおすすめします。

―スマホやパソコンを見ても疲れ目にならないようするにはどうしたらよいでしょうか?

石岡先生:一番はスマホもパソコンも見ないことですが......まあ、それはなかなかできませんので(笑)。休憩を入れることですね。厚生労働省が通達しているガイドライン(※)では1時間作業をしたら休みましょうと言っています。休憩中は画面から目線を外して、遠くを見るようにしてください。作業部屋が狭い、窓がないなどの理由で遠くを見られない方は、目を閉じて休憩しましょう。

※「VDT作業のための労働衛生上の指針」のこと。VDT作業(パソコンの画面やモニターを見る作業)をする労働者は「一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10~15分の作業休止時間を設け、かつ、一連続作業時間内において1~2回程度の小休止を設けること」とされている。

―近くを見るのが悪いのではなく、見続けてしまうことが問題なのですね。

石岡先生:たとえば私たち眼科医は、モニターを見たり書類を書いたり、機械をのぞいて検査することもあれば、患者さんとおはなしすることもあります。こうして常に違う距離にピントを合わせていると、意外に疲れを感じにくいものです。スマホやパソコンは私たちの生活から切り離せないもの。意識的に目を休ませながらうまく付き合っていきたいですね。

最後に、目が疲れる原因はひとつとは限りません。いろいろ工夫を凝らしても改善されない場合は、お近くの眼科に相談してみてください。

まとめ

ビジネスもコミュニケーションも、いまやスマホやパソコンがなくては難しい世の中になりました。しかし、どんなに優れたツールでも、使い過ぎれば私たちの健康を大きく損ねる可能性があることを忘れてはいけません。

利用するときには定期的に休憩を挟み、終わったらしっかりとケアをして。常に自身の目の状態に注意を払いながら、インターネットライフを満喫しましょう!