プロが教えるカメラのスペックから見るスマホの選び方【スマホカメラ特集①】
最近のスマートフォンはとにかくカメラがすごい!
レンズが複数ついたいわゆる"タピオカカメラ"や、背景をボカして撮れるポートレートモード、写真を判別して自動的に最適な調整をしてくれるAI機能など、進化しすぎてついていけない! と感じている人も多いのではないでしょうか。
そこで今回はプロカメラマンである岡田佳那子さんに、スマホカメラのスペックの見方や、スマホカメラで良い写真を撮るコツについて教えていただきました!
<岡田佳那子さんプロフィール>
岡田佳那子さん
奈良県出身。 同志社大学文学部卒業後、会社員を経て、東京、NYで写真を学び、鏑木穣氏に師事。現在は、ポートレート、音楽、ファッションなど、東京を中心に、写真、動画、編集、講師など様々な分野で活動中。
年に数回、大阪にて一般向け家族写真やポートレート撮影専門の【オカダ写真館】を開催している。
URL:kana-sta.comスマホカメラのスペックの見方って? プロカメラマンが解説!
ースマホカメラといっても機種によって性能はまちまち。スペックを見ても謎の数字が並んでいて、それぞれどんな特徴を表しているのかよくわかりません。岡田さん! スマホカメラのスペックについて教えてください!
岡田佳那子さん(以下岡田さん):わかりました! では「OPPO Reno3 A」を例に挙げてみましょう。
アウトカメラ | インカメラ |
[超広角] 800万画素 (ƒ/2.2 絞り値 / 画角119°) [メイン] 4,800万画素 (ƒ/1.7 絞り値) [モノクロ] 200万画素 (ƒ/2.4 絞り値) [ポートレート] 200万画素 (ƒ/2.4 絞り値) |
1,600万画素 (ƒ/2.0 絞り値) |
▲OPPO Reno3 Aのカメラスペック表
岡田さん:「OPPO Reno3 A」はOPPOの最新スマホで非常に高性能なカメラを搭載しています。特にメインカメラの画素数は4,800万画素と非常に高画素ですね。
スマホカメラの画素数って何?
ー画素数ってよく目にしますね。いったい何のことなんでしょう?
岡田さん:画素数とはデジタル写真の画像を構成する「点」の数です。写真をどんどん拡大していくと小さな点の集まりであることがわかります。この点の数を画素数で表します。
ーということは、4,800万画素というのは1枚の写真の中に小さな点が4,800万個あるということ?
岡田さん:その通りです! 画素数が多ければ細かいところまで描写できるので、写真は高精細になります。
ーつまり、画素数は多ければ多いほど画質が良くなるんですね。
岡田さん:いえ、そういうわけでもありません。たとえばiPhoneは最新モデルでも1,200万画素しかありません(編集部注記:取材日時点での情報です)。でも画質は4,800万画素のスマホと比べても決して劣りません。
機種 | アウトカメラ(iSightカメラ) | インカメラ(FaceTimeカメラ) |
---|---|---|
iPhone 11 Pro Max | 1,200万画素 | 1,200万画素 |
iPhone 11 Pro | ||
iPhone 11 | ||
iPhone SE(第2世代) | 700万画素 | |
iPhone XS | ||
iPhone XS Max | ||
iPhone X | ||
iPhone 8 |
▲iPhoneの画素数は実はスマホが進化しても変わっていない
ーたしかにそうですね。でもなぜですか?
岡田さん:実は画素数がいくら多くても、それを表示するディスプレイの画素数が追いつかないんです。たとえば一般的なフルHDディスプレイで表示できる画素数は約200万画素しかないんです。最近はより高精細な4Kディスプレイも増えてきましたが、4Kでも画素数は約800万画素です。
ーえっ! ということはそれ以上の画素数は無駄......?
岡田さん:無駄というわけではありません。高画素が威力を発揮するのは遠くのものを拡大して撮りたいときです。スマホで遠くのものを撮影するとき、皆さん指で画面を広げるようにして拡大しますよね。
ーはい。でも拡大しすぎるとなんだか写真がボヤッとします。
岡田さん:一般的にスマホカメラのズーム機能は、「指で拡大する」動作で写真を切り取っている(トリミング)のと同じなんです。これをデジタルズームと呼びます。
ーそうだったんですね! デジタルズームすると画質が落ちるのはなぜですか?
岡田さん:写真をトリミングすると、切り取られた分の画素数が減ってしまいます。拡大率が高ければ高いほど画素数はどんどん減っていくんです。あまりにも拡大しすぎると、目で見てもはっきりわかるほど画質は落ちてしまいます。
ーということは、もともとの画素数が多ければその分、トリミング後の画素数に余裕があるということですか?
岡田さん:その通りです! 画素数が多いと写真をデジタルズームで拡大しても画質が落ちにくいメリットがあるのです。
ー遠くのものを大きく撮りたい場合は、高画素のメリットがあるわけですね。
岡田さん:そうですね。もちろん、メーカーごとに様々な工夫や機能がありますから、単純に画素数だけで画質が決まるわけではありませんが。
スマホカメラのF値とは?
ーでは次に「f/2.2」のような表記について教えていただけますか。
岡田さん:この数字は「F値」といって、レンズの明るさを表しています。数字が小さければ小さいほど明るいレンズを搭載していることになります。日中など、明るい場所ではあまり画質に影響はありませんが、暗い場所になると明るいレンズの方がきれいに撮れます。ただ、最近のスマホのレンズはどれも明るいので、選ぶときにそれほど気にしなくても大丈夫です。
ーなるほど!
スマホを選ぶときにチェックするポイント
ーところで最近のスマホはたくさんのレンズがついているものもありますが、どんなふうに選べばいいでしょうか?
岡田さん:レンズによって撮れる範囲が変わったりもするので、目的に応じて選ぶといいですね。たとえば「OPPO Reno3 A」や「iPhone 11Pro」、「HUAWEI P30」、「ZenFone 6」など最先端のスマホは超広角レンズを搭載していることが多いです。超広角レンズは目で見た景色よりもはるかに広い範囲を写せるので、狭い場所での撮影や風景をダイナミックに撮りたい場合におすすめです。
機種 | アウトカメラ | インカメラ | 備考 |
---|---|---|---|
OPPO Reno3 A | [超広角] 800万画素 (ƒ/2.2 絞り値 / 画角119°) [メイン] 4,800万画素 (ƒ/1.7 絞り値) [モノクロ] 200万画素 (ƒ/2.4 絞り値) [ポートレート] 200万画素 (ƒ/2.4 絞り値) |
1,600万画素 (ƒ/2.0 絞り値) | エキスパート、パノラマ、ポートレート、夜、タイムラプス動画、スローモーション動画など |
iPhone 11Pro |
[超広角] 1200万画素(ƒ/2.4絞り値 / 120°視野角) [広角] 1200万画素(ƒ/1.8絞り値) [望遠]1200万画素(ƒ/2.0絞り値) |
1,200万画素(ƒ/2.2絞り値) | 2倍の光学ズームイン、2倍の光学ズームアウト、最大10倍のデジタルズーム ポートレートモード Toneフラッシュとスローシンクロ パノラマ、ナイトモード、HDR、Live Photos |
HUAWEI P30 | [広角]4000万画素(ƒ/1.8絞り値) [超広角]1600万画素(ƒ/2.2絞り値) [望遠]800万画素(ƒ/2.4絞り値) |
3200万画素(ƒ/2.0絞り値) | 30倍までのデジタルズーム、光学手振れ補正、2.5センチのマクロレンズ、AI HDR+技術 |
ZenFone 6 |
メイン]4,800万画素(ƒ/1.79絞り値) [広角]1,300万画素 |
※フリップカメラ | デュアルLEDフラッシュ、レーザーオートフォーカス |
▲スマートフォンカメラの比較表
岡田さん:さらに最近は望遠レンズを搭載しているスマホも登場しています。先ほど指で画面を広げるデジタルズームは画質が落ちると言いましたが、望遠レンズなら画質をあまり落とさずに撮影できるのでスマホ選びの参考にしてみてください。
その他気になるスマホカメラの機能について解説
ー最近のスマホには他にもいろいろなカメラや機能があって、なんだかややこしいです。
岡田さん:ではその他、スマホによく搭載されているカメラや機能について説明しますね。
【TOFカメラ】
最近、スマホに搭載されることが増えてきたカメラです。「Time of Flight」の略称で、光の反射を使って被写体との距離を計測します。距離を測定できると、ピント合わせが正確になったり、「ボケ」の表現がさらに向上します。「HUAWEI P30 Pro」をはじめとする最先端のスマホがこのカメラを搭載しています。
【フリップカメラ】
ZenFoneシリーズが搭載しています。普段はスマホ本体にカメラが収納されていて、撮影時だけ立ち上がる仕掛けです。一般的なスマホはインカメラが画面の上部についているので、その部分だけ画面が黒く切れています。この部分を「ノッチ」と呼ぶのですが、フリップカメラの場合、普段カメラは収納されているのでノッチがありません。その分、スマホの画面を本体の端ギリギリまで広げることができるメリットがあります。
【Live Photos】
iPhoneシリーズに搭載されている機能です。撮影した前後1.5秒ずつ、合計で3秒間の映像と音声を記録する機能です。わずか3秒間ですが、後から見返したときにその場の状況が生き生きとよみがえります。集合写真などに使うと目つぶりや半目のないタイミングを切り出すこともできて便利です。撮影後に「長時間露光」というエフェクトを使って、スローシャッターで撮ったような写真に仕上げることもできます。
【HDR】
最近スマホに搭載されることが増えてきた機能で、「ハイダイナミックレンジ合成」の略称です。HDRをオンにしておくと明暗差の激しい状況でも白飛びや黒つぶれのない写真を撮ることができます。【パノラマ】
▲岡田さんが実際に野球場で撮ったパノラマ写真
多くのスマホに搭載されている機能で、目の前を180度一枚の写真に収めることができます。シャッターボタンを押してからスマホをゆっくり横に動かしていくだけ。あとはスマホが自動的に合成処理をしてきれいなパノラマ写真に仕上げてくれます。超広角カメラでも収まりきらないような広い範囲を一枚で撮りたいときに便利です。おすすめのシチュエーションは球場や観光地での撮影。迫力のある雰囲気を撮影することができます。
スマホのカメラを最大限活用するためのグッズは?
ーお話を聞いていて、私もいろいろな撮影をしてみたいと思いました! 特にいいなと思ったのが超広角レンズでの撮影なんですが、高級なスマホでないと超広角レンズはついていないんですよね。かといってカメラのためだけにスマホを買い換えることもできませんし......。
岡田さん:そんなときは外付けのクリップレンズを活用するといいですよ。クリップレンズはいろいろなメーカーから発売されていて、スマホを挟むようにして簡単に取り付けることができます。超広角レンズや接写レンズ、魚眼レンズ、超望遠レンズなど、スマホにはない個性的なレンズばかり。スマホ単体では難しい写真も撮れるので、ぜひチャレンジしてみてください。
▲ビックカメラ.comでも多数のクリップレンズが売られていますが、安いものでも試してみる価値はあるそう
▲岡田さんが魚眼レンズで撮影した建物
▲岡田さんが広角レンズで撮影した車
▲スタッフが撮影した花 スマホカメラ(上)接写レンズ使用(下)
その他、シチュエーションによっては三脚を利用しましょう。特に動画を撮るときは三脚に固定した方がいいですね。ずっと手に持っていると疲れるし、手ブレもするので。
高機能になったスマホカメラのデメリットって? 対策はどうすればいい?
ーさっそくいろいろ撮影してみます! ただ心配なことが......カメラマンだと特に写真をたくさん撮るので、「あれっ、写真が保存できない!? うわ、スマホの容量がいっぱいになってしまった」みたいなことありませんか?
岡田さん:スマホの"あるある"な悩みですね。最新のスマホは画素数が多いので、その分ファイルサイズも大きくなります。Live Photosやパノラマ写真なんかもファイルサイズは大きめです。高機能なスマホカメラで写真をたくさん撮っていると、スマホの容量が足りなくなってしまいがちですね。
ー昔の写真や動画を消すしかないんでしょうか。できれば残しておきたい......。
岡田さん:消す前にバックアップしておけば大丈夫ですよ。おすすめはクラウドストレージを使うことです。Google フォトやAmazon Photos、iCloud、みてねなどに写真をバックアップして、それから消すといいでしょう。SNSにアップするのも一つのバックアップですね。ただし、プライベートな写真は公開範囲には注意する必要があります。クラウド以外にもHDDなどにバックアップしておくとさらに安心です。
・Google フォト
最大 16 メガピクセル、動画は最大 1080p の HDで、無料・容量無制限でバックアップ可能。
▼Google フォトのダウンロード先▼
App Store
Google Play
・Amazon Photos
Amazonプライム会員であれば、容量無制限の写真ストレージと、5GBの無料ビデオストレージ、Amazonプライム会員登録がなくても5GBの無料ストレージが利用可能。
▼Amazon Photosのダウンロード先▼
App Store
Google Play
・家族アルバム みてね - 子供の写真や動画を共有、整理アプリ
子どもの画像ばかり増えてしまうという人は、無料・無制限でアップロードでき、家族への共有が可能なアプリ。
▼家族アルバム みてね - 子供の写真や動画を共有、整理アプリのダウンロード先▼
App Store
Google Play
・iCloud Drive
アップル社の提供するサーバに、あらゆるファイルを格納しておけるクラウドストレージサービス。iPhoneユーザーは 5 GB の無料ストレージが使える。
▼iCloudのログイン先▼
https://www.icloud.com/
岡田さん:特にお気に入りの写真はプリントするのもおすすめですね。スマホのカメラが高画質なので、プリントでもとても綺麗に出力されます。
それから、そもそも不要な機能をオフにしておくことも大事です。たとえば毎回Live Photosをオンにするのではなく、ここぞというときに使いましょう。そうすることで最初から容量を節約することができます。
ー岡田さん、ありがとうございます! 次に機種変するときは、いただいたアドバイスをもとに選びたいと思います!
まとめ
最後にスマホカメラのちょっとした裏話を一つ。スマホカメラの画質に大きく関わる部品である「センサー」ですが、実は必ずしもスマホメーカーが自社で製造しているとは限らないんです。スマホカメラのセンサーを提供しているのはソニーやサムスン、OmniVisionなど限られたメーカーです。つまりiPhoneのカメラって実は......? なんて想像してみるのも面白いかもしれませんね。
今回は、知っているようで知らなかったスマホカメラのスペックや機能について岡田さんに教えていただきました。いきなり今日から全部を使いこなすのは難しいかもしれませんが、自分のライフスタイルやカメラの用途に合わせてちょっとずつ挑戦してみたいですね!
文/山田井ユウキ
撮影/岡田佳那子