「スマホ代月額3万円を6年間払い続けた人」に根掘り葉掘り聞いてみた
人々の家計にのしかかるスマホの通信料。「もっと安くしたい」と思ったことは一度や二度あるのではないでしょうか。
そんな国民の悩みを察した政府は、携帯電話業界に対し、行き過ぎた囲い込みを是正する改正法や、携帯電話料金を値下げする政策を打ち出しました。菅政権は携帯料金の値下げを政権公約にしており、大手キャリアから格安プランが発表され、格安SIMとしのぎを削っています。
MMD研究所の調査(2020年11月時点)によると、スマホユーザーの月額料金の平均額は、大手3社の利用者が8,312円、格安SIMの利用者が4,424円。全体的に1万円以下となり、一昔前と比べれば随分と安くなりました。
そんな中、スマホ代に毎月平均3万円も払っているという驚きの人を発見。それもかれこれ6年間。つまり216万円もスマホ代に消えているというのです。なぜこんなに高額なスマホ代を払い続けているのか?その謎に迫ります。
【顔出しNGのゲスト】
キンキさん(仮名)
男性、28歳。関西出身で東京都在住。スマホ通信料の契約は大手キャリアで、機種はiPhone SE(第2世代)。いろんなことを配慮して撮影はNG。
スマホ代が年間36万円で、6年で216万円とは?
こんにちは、ライターのツマミ具衣です。今回は、インタビュアーのプレーリードッグの中の人です。突然ですが、あのー、スマホ代が月3万円って聞いたんですが、本当ですか?
本当です。4万円いく月もあるし、たまに2万円代なら安かったなーって感じです。この通り。
うわー! マジじゃないですか! 私だったらすぐスマホ代を見直します。なぜこんなに高額なんですか?
僕もよくわからないんですよ。なんか気づいたらこうなってて。だいたい6年間くらいずっと3万円なので。
それって合計したら......。
えっと......年間36万円で、6年で216万円みたいです。
えぇーーー!? 「僕のスマホ代高過ぎぃぃぃ!」的な感情がこみ上げることはなかったんですか?
それがなかったんですよ。3万円という金額自体は高いですけど、そんなもんなのかなと思ってました。今更もったいないという感覚もないです。
あっけらかんとしてますね。もしかして、この程度の金額は気にならないくらいお金持ちとか......?
ただのフリーターです。給与は月20万円くらいです。
私がファイナンシャルプランナーだったら呆れてますね。
スマホ代月3万円の人がスマホを手にするまで
高額の謎を解き明かすために、まずは現在に至るまでの携帯電話の遍歴を聞かせてください。
中学時代にさかのぼるんですが、僕は携帯電話が欲しくても全然買ってもらえなかったんですよ。当時はガラケーで、クラスメイトの大半は持っていて、僕もすごく欲しくて憧れていたのに、親に買ってもらえずしょっちゅう喧嘩していました。家中の壁に「ケータイ」って文字を書いた紙を貼り付けたり、親に何か話しかけられても「ケータイ」しか返事しなかったりして。
反抗期の形がユニーク。
母親は全然理解してくれなかったんですが、祖父が「今どきケータイくらい持っていないと」と説得してくれて、やっと買ってもらえたのが、高校生のとき。「SH001」のガラケーでした。遅れを取った分、使いこなしてやろうとモバゲーやmixiをめちゃくちゃ使う生活をしていましたね。 大学からは東京に上京して一人暮らしを始めました。そのときにiPhone 4Sを祖父から買ってもらったんです。
おじいちゃんは、理解者ですね。そのときの料金は?
料金は月額1万円くらいで、バイトして払ってました。 でも1万円ははじめの3カ月くらいで、だいたい2万5000円くらいになってましたね。仕送りはないし、奨学金も親に反対されて申請できなかったので。生活費は全部自分で賄わないといけませんでした。
すでに高いような......。スマホは主に何に使ったんですか?
アプリをダウンロードするのにハマり、コレクター癖に火がついて、有料無料問わずいろんなアプリをダウンロードしては、どれが使いやすいか検証していました。ホーム画面は10ページくらいフォルダで埋め尽くされていましたよ。 アプリをダウンロードしていたらギガが足りなくなるので、大学2年から追加データを購入するようになりました。Wi-Fiを使うという習慣がなかったものあって。
いやWi-Fi使って〜!
気になったら一刻も早くダウンロードしたくなっちゃうんですよね。あとソシャゲにハマった時期もあって、課金がやばかったです。月10万円とか。
10万!?
その辺でスマホ代の感覚はゆるくなっていきました。30万円も払ってる友人もいましたし。スマホ自体が趣味だったので、通信費というより娯楽費として割り切っていて、iPhoneも8までは新作が出るたびに機種変更してました。
なるほど......娯楽費ですか。では、もったいないと思ったことはないんですか?
うーん、ないですね。自分で稼いだお金なんだから、好きに使ってもいいだろうと思っていました。もし、親から仕送りをもらってたら、2〜4万円もスマホに突っ込っこむのはもったいないと罪悪感を感じたかもしれないです。
しかし、大学生のバイト代だけで生活は成り立っていたんですか?
バイト代は基本的に月15万円くらい稼いでましたが、少ないときは8万円くらい。そのときは、クレジットカードを使ったり友達に借りたりしてました。公共料金の支払いを後回しするようになって、よく電気が止まるような生活になってましたね。
ほらー!! 料金見直しして〜!
スマホ代月3万円の謎とは?
大学3年生のときに、データ通信量をもっと増やしたい、ついでにiPhone 8に変えて端末の容量も一番大きいのにしよう、と家電量販店に行ったんですよ。
料金見直しのチャンス到来!
店員さんに「それならキャリア自体を変えたほうがいいですよ」と案内されて、現在のキャリアに変えました。そのとき店員さんにWi-Fiを勧められて、契約したんです。
店員さんナイス! なら、スマホ代の請求地獄とはおさらばになるんじゃ......?
それが、Wi-Fiは結局繋がなかったんです。
え?
言われるがままに契約したけど、家よりバイト先にいることが多かったし、パソコンも持ってないから家でネットに繋ぐ必要がないし。別にWi-Fiがなくても料金は4万円以下のままだったので、「いらなくない?」って思って。 だんだんモデムとルーターが意味もなく部屋に置いてあるのが邪魔に思えてきて、普通に解約すればよかったんですけど、当時断捨離の本も読んでた影響で、あるとき衝動的に解約しちゃいました。
え? え? 思考回路が追いつかなくて怖くなってきました......。大学卒業後はどんな生活をしてるんですか?
バイトばっかりしていて就活をしていなかったので、そのままバイト先でフリーター生活が始まって、いまもそんな感じです。
料金を見直そうということは一度もなかったんですか?
3万円という金額自体は高いと思っていたんですが、スマホ代を話題にすることもなかったので、みんなこれくらいなんじゃないかなーって思っていました。
うーん。スマホの料金の請求明細を確認したこともないんですか?
ちゃんとはないです。合計の金額しかみてなくて。
明細(※2021年1月のもの)を持ってきてもらったので、確認してみましょう!
ふむふむ。基本データ通信が20GBで、追加データ料金1,000円が22回、もうひとつの追加料金1,000円が7回......どうやら計29回も追加データがあるのが原因のようですね。
そうだったんですか。じゃあ基本料金だけなら1万円以下なんですね。
しかし、追加料金はオートチャージの設定みたいです。これは自動的に課金される危険な設定ですよ。
昔は尽きたら毎回ギガを買ってたんですけど、オートチャージ機能があると知って、設定を変えたんですよ。そしたらすごく快適になりました。でもYouTubeを流しっぱなしにして、寝ている間に見てもないのに追加データを払っていることも増えましたね。
やっぱりWi-Fiあったほうがよかったですよ......。 格安SIMを考えたことは?
格安SIMは少し気になってますけど、どうしても大手キャリア信仰があって。遅いし繋がりにくいという噂を聞いたので、なんとなく嫌だなって思っています。やっぱり大手なら間違いないだろうと。総じて4万円以内ならOKという感覚でした。
うーん、ランチ時間や通勤時間など一部時間帯を除けば快適ですけどね......。学生時代もギリギリの生活でしたが、今は大丈夫なんですか?
それが、社会人になったら住民税とか健康保険料がかかるじゃないですか。どんどん給与が追いつかなくなって、あるときからクレカも滞納で使えなくなりました。どうにかパチンコとか麻雀で一発当てようとするんですけど、結局負けるんですよね。
あぁ......、嫌な予感が的中してしまいました。
家賃滞納の末、家を追い出されてホームレスになったこともありましたよ。代々木公園で寝ていたり、ネカフェに泊まったり。
そこまでとは予想外でした。
でも大家から家賃払えと言われようが、電気が止まろうが、スマホ代は滞納したことはないんです。スマホが使えないのは人生で一番の苦痛なので。それに比べたら、野宿するのはたいしたことがないと言いますか。
逞しいのか繊細なのか......。
どんどん借金が膨らむばかりで......さすがに生活を見直そうかなと。
なんと......。言葉を失ってしまいました。そんな状況になって、スマホ代にいままで216万円もかかっていることへの後悔はないんですか?
金額分は使っていると思うんで、まぁ十分楽しんできたかなって。
お金がなくなる恐怖より、スマホへの執着が勝ったということですか......。
たしかにそうですね。スマホは、ずっとガラケーを買ってもらえなかったときの執着がずっと続いているんですよね。もう好きすぎて嫌いみたいなところもありますよ。
今後もスマホ代月3万円を払い続けていくんですか?
うーん。さすがに借金もあるし、そうも言っていられないかなと。格安SIMで安くて速ければ一番いいのですが......。まずはいろんな格安SIMの会社を探してみようと思います!
まとめ
スマホ代3万円の謎について聞いていたら、驚愕の人生が明らかになりました。
この"スマホ代月額3万円の人"は、生活再建に向けて動いているとのこと。まずは固定費を見直して引っ越しし、ネットつきの新居でWi-Fi環境を手に入れました。次は格安SIMに変えるためにリサーチ中だとか。浮いたスマホ代で、滞納していた保険料や税金の支払いにあてていくそうで、彼にはこの調子で頑張っていただきたいです。
聞くと、Wi-Fiを使うようになった現在のギガ使用量は月13GB。オートチャージで50GB以上になっていた頃に比べて、かなりスリムになりました。ちなみにBIC SIMなら、15GBで1,800円のギガプランがぴったり。ビック光も同時に契約すれば、さらにお得になります。
このようなケースはかなり稀だとは思いますが、生活費を見直さなかった恐ろしい結末には違いありません。生活費の見直し、まずはスマホ代から始めてみませんか。
文/ツマミ具依 イラスト/おほしんたろう 編集/株式会社LIG