XR配信プラットフォーム・Blinky(ブリンキー)に聞く VR初心者がスマホからはじめるための『VR入門』
昨年、Facebook社が会社名をMetaに変えてから、VR、メタバース界隈が急速に盛り上がっています。とはいえ、いきなり高価なVRゴーグルを買うのもハードルがあります。
そこで今回はVR動画プラットフォーム「Blinky」を運営する株式会社アルファコードさんのオフィスにお邪魔しました。「Blinky」にはスマホだけで手軽に楽しめるVRコンテンツが豊富に取り揃えられているとのこと。まずは「Blinky」でVR映像を体験しつつ、VRのこれからについて基礎知識を仕入れておきましょう。
今回VRについて教えてくれるのはこちらの方です。
株式会社アルファコード 代表取締役社長 CEO 水野拓宏さん
株式会社ドワンゴで 数々のゲームタイトルや大規模Webサービスのネットワーク・システム設計などを担当。同年、株式会社ユビキタスエンターテインメントで取締役副社長 兼 CTOを歴任。2015年に 株式会社アルファコードを設立し独立。2019年6月に誰でも簡単にVRコンテンツを制作・配信・販売できる空間プラットフォーム「Blinky」を開始。
公式サイト:https://blinky.jp/
そもそもVRってどういうもの?
ー本日はよろしくおねがいします。まずは基本的な質問をさせてください。近年、「VR」という言葉が広がっていて、さらにはARや、MR、XRという言葉もあります。この違いを簡単に教えていただけますか?
水野拓宏さん(以下水野さん):そうですね。簡単に言うと、今、世間でVRと言われているのは、人間がコンピューターで作られた空間に行く、3Dゲームとかライブ空間ですね。現実に関係ない作られた空間に行くのがVRです。それに対してARは、僕らがいる現実の風景にコンピューターから情報が出てきて助けてくれる。例えば人の名前や曲名が現実に重ね合って表示されるとか。
ー仮想空間か、現実空間かということですね。
水野さん:そうですね。さらにその両方の区別がつかないのがMRです。
ー区別がつかないのですか?
水野さん:そうです。人間には、コンピューターが作った空間なのか、現実の空間なのか区別がつかない世界ですね。今はまだ技術がそこまで完璧ではありませんが。
スマホでも楽しめるBlinkyさんのコンテンツを体験したい!
ー水野さんが今運営されている「Blinky」は、VRでライブが楽しめるサービスだと聞きました。この「Blinky」って具体的にはどんなサービスなのでしょうか?
超体感XR配信プラットフォーム Blinky(ブリンキー:https://blinky.jp/)
水野さん:「Blinky」は音楽や演劇などのいわゆるライブエンターテイメントを、VRを使ってどこでもいつでも体験できるサービスです。著名なアーティストさんの音楽ライブやミュージカルをVRで楽しむことができます。「Blinky」を使うことで、世界中のどこかで行われているライブや演劇を実際に行った気分で味わえるというサービスですね。
ーもともとはライブコンテンツを中心にスタートしたサービスだったとお聞きしました。ライブ以外にどういうコンテンツがあるのでしょうか?
水野さん:ライブ以外ですと、世界各地のバーチャルツアーなどもあります。他にも、獺祭という日本酒の酒蔵見学VRや、その獺祭の酒米ができるまでの1年間を5分で体験できるコンテンツなどもあります。また、帝京大学医学部さんと一緒に、医療従事者に向けてコロナの防護服を正しく着用するためのVRコンテンツも開発しました。
ーそれは飛行機が飛ぶ前に流れる安全ビデオみたいなものですか?
水野さん:そうです。それをVRで見られるということです。「Blinky」の特徴の一つにマルチアングル機能があります。通常のVR映像って、カメラが撮った場所1箇所からの360度映像が見られるのですが、「Blinky」の場合は複数の視点から見たい場所を選んで体験できるんですよ。だから、防護服の着方をいろんな位置から確認できますし、ライブの場合は客席だけでなく、舞台の上のVRならではの視点も楽しむことができます。
【ライブ配信】対応機種確認コンテンツ:https://share.blinky.jp/s/MTY3OQ
ー「Blinky」を少し使ってみましたが、超高画質の8K映像もあって、かなり画質にはこだわっているように感じました。
水野さん:VR映像で最も重要なのが解像度なのです。「Blinky」は他社に先駆けて8KのVR配信を行っています。マルチアングルVRの配信としても8Kを選べるので、その場合、8K画質を6箇所のアングルで楽しむことができます。8KのVR映像を見ると、みんな思わず「あっ」って声をあげちゃうんですよ。それくらい8KのVRって迫力があるのです。
ーでも、スマホやVRゴーグルはそこまで解像度は高くないですよね?
水野さん:8K配信はよく勘違いされるんですけど、ゴーグルに8Kの映像がそのまま映るわけじゃないんです。VR映像は、360度の映像の一部分を覗き見る感じになります。だから元々の映像の解像度が高くないと覗き込んだところが鮮明に見えないのです。
▲VRゴーグル
ー8K画質だから一部分を見てもちゃんとした解像度で見られるということなのですね。
水野さん:はい。さらに映像だけでなく、「Blinky」では高音質配信にも対応しています。VR映像を見るとき、音ってすごく重要。「Blinky」には高画質・高音質、それが実現できる配信の仕組みがあるのです。
ー「Blinky」のVRコンテンツはスマートフォンで見られるんですよね?
水野さん:8割のユーザーがスマートフォンとPCのブラウザーで見ています。残り2割がOculusなどのスタンドアロン型VRゴーグルです。ライブのオンデマンド配信などでは、最終日近くになるとより臨場感や没入感を味わいたくて、「VRゴーグルを買ってきた!」なんていうユーザーもいらっしゃいます。
▲スマートフォンを取り付けるタイプのVRゴーグル
ースマートフォンを取り付けるタイプのVRゴーグルも使えますか?
水野さん:もちろん使えます。VR体験の入り口として、みんな使っているスマートフォンで手軽に見られるようになっています。「Blinky」は弊社の高い技術力で色んな機器に対応しているので、気分とかコンテンツによって、スマートフォンでみたり、PCブラウザーで見たり、本格的なVRゴーグルで見たりできるようになっています。
5GによってスマホでVRがもっと楽しめるようになるって本当?
ー今、スマートフォンでは5Gが広がり始めています。これはどうVRに影響してくるのでしょうか?
水野さん:我々が5Gに期待していることが、2つあります。1つは5Gが普及すると高解像度VRが、いつでもどこでも見られるようになることです。これって本当に魅力的なことだと思っています。
ーそんなに4G LTEとは違いますか?
水野さん:例えば車の中にいたり旅行先にいるときに、行けなかったライブを見たい場合、4Gだと8Kのライブストリーミングは見られません。しかし、私たちの実験だと5Gなら見られそうです。これまで家の高速インターネットでしか見られなかった8KのVRストリーミングが、いつでもどこでも見られるようになるのです。
もう一つは配信側です。今、VRのライブコンテンツを配信するとき、4Gだとちょっと速度が足りないのですが、これが5Gになるといつでもどこからでもライブ配信が送れるようになります。これがとても大きいのです。
ー屋外でもVRが見られるし、屋外からでも配信できるということですね。
水野さん:さらには、会議やトークショーのときに、今からVRカメラを持ってきて配信して、インターネットの向こうの人にもVRで見てもらおう、といったことも4Gだと難しいのですが、5Gなら可能になります。早くそうなってほしいなと思っていますね。
ー今回、BIC SIMの記事でお話を伺っていますが、そういったサービスは、いわゆる格安SIMを使っていても利用できるのでしょうか?
水野さん:格安SIMに限らず、そのサービスの通信速度や容量次第ですよね。ただ、「Blinky」にはオフラインダウンロード機能があります。空いている時間帯や、通信量が使えるという時に端末側にダウンロードしておけば、そのあとの通信量を削減することができますよ。
VR初心者がまずスマホで楽しむためには?
ーこれから「Blinky」でVRを楽しんでみたい、という場合「スマホ用ゴーグルを使う」からはじめればいいですか? 安くなったとはいえ、スタンドアロン型のVRゴーグルでもそこそこ高いですよね。
水野さん:スマホで手軽にVR体験したいのなら、それがいいと思います。「Blinky」で用意している実写のVR映像は3DCGを使うわけではないので、スマホでも没入感が高い。まずはそこを入り口にしてほしいなと思いますね。
ー初めて「Blinky」を使うユーザーにおすすめのコンテンツはありますか?
水野さん:そうですね、入りやすいところで「Blinky」のマルチアングルVRを生かしたライブのサンプルコンテンツがあります。ウルフルズさんの『バンザイ 〜好きでよかった〜』という有名な曲なのですが、それをマルチアングルで見られるのです。これを体験していただくとVRってこういうことができるんだな、というのがわかりやすいと思います。
【サンプル映像】ウルフルズ ライブ2020-2021~バンザイサビ映像〜:https://share.blinky.jp/s/Mjc2MA
ーそれはさっき言った、ステージ上の視点で見ることもできるんでしょうか?
水野さん:そうですね、ネタバレになっちゃいますが、カメラが4つあります。一つが今まで通りの16:9の映像。VR内で見ても大画面で見られるっていう仕組みです。そこからアングルを切り替えると、ボーカルの方を目の前で見られたり、ベースやドラムの横で見られます。VRじゃなければ体験できない迫力のマルチアングルライブになっています。あれはいいですね。
まとめ:まずはスマホからVRをはじめよう
2022年、大ブームが巻き起こる可能性も高いVR。とはいえ、スタンドアロン型VRゴーグルも安くはなってきていますが「試しに買ってみる」にはまだまだ高い価格帯です。
今回お話を聞いたように格安SIMユーザーでもVRは楽しめます。スマホ型のVRゴーグルなら数千円から入手できるので、まずはスマホを使ってコンテンツを見るということを、VRを楽しむ入り口としてはいかがでしょうか。
文/コヤマタカヒロ 撮影/橋本千尋編集/株式会社LIG