スマホやウェアラブルデバイスで血中酸素濃度が計測できるって本当?スマホでの健康管理方法を医師に聞きました
長く続くコロナ禍による巣ごもり生活は運動不足やその他、いろいろな健康リスクを招いています。新しい生活様式の中で、改めて健康管理について考え直したという人も多いようです。
現在、健康管理を行うためのツールとして欠かせないのがスマートフォン(以下、スマホ)やスマートウォッチといったデジタルデバイスの数々。持ち歩いているだけで毎日の歩数を管理できたり、脈拍や不整脈などもチェックできます。健康管理という面でこれらのデジタルデバイスはどのように活用するのがいいのでしょうか。
今回、最先端のデジタルデバイスにも知見がある、医療法人社団茜遥会 目々澤醫院の目々澤肇先生に、スマホやスマートウォッチを活用した健康管理についてお話を伺いました。
お話を聞いた人:目々澤肇(めめざわはじめ)先生
1933年に東京都江戸川区に開設された目々澤醫院の第3代目院長。専門は神経内科。
目々澤醫院:http://www.memezawa.com/med/
今注目の健康管理ができるウェアラブルデバイスとは?
家庭で生体情報が取得できるようになった
スマホやスマートウォッチを利用した健康管理に注目が集まっています。例えばiPhoneではヘルスケア機能を搭載。歩数や睡眠など、様々なデータの計測ができます。また、Androidスマホでは健康管理アプリ、Google Fitが利用可能(iPhone用もあり)。歩数やカロリーなどの自動計測ができます。
さらに、より細かく生体情報を取得できるのがスマートウォッチです。代表的なデバイスであるApple Watchでは心拍数や心電図、血中酸素濃度などの計測に対応。iPhoneとApple Watchを組み合わせて使うことで多くの生体情報を記録できるようになりました。
今まで家庭では体温や血圧を測り、手帳などに記録するぐらいしか、生体情報は取得できませんでした。それが、iPhoneとApple Watchが出て大きく変わりました。Apple Watchでは最初の製品で脈拍を測れるようになり、そののち家庭用医療機器として、PMDA(医薬品医療機器総合機構)の認可を取って、心電図も取れるようになりました。 また、血中酸素ウェルネスAppでは、血中酸素がモニターできるようになっています。
あくまで参考値として診察に活用できる
これまで病院に行かないと測定できなかった情報がスマホ、スマートウォッチを使うことで簡単に取得できるようになりました。ではこれらのツールはどのように活用すれば良いのでしょうか。目々澤先生はあくまで医療機器ではないという前提のもと、参考値としてなら診察にも活用できる、といいます。
実は不整脈(脈拍の異常)が家でしか出ない人もいます。そういった場合、病院での検査では検出できないのです。この心房細動という病気では心臓の拍動リズムに乱れが起こります。そうなると心臓にある左心耳のなかに溜まった血栓が左心室から大動脈に流れ出てしまい、脳に飛び塞栓を起こしてしまう、つまり脳梗塞を起こす可能性がある。
▲Apple Watchで計測したデータはこのようにまとめて見ることができる
普段から心房細動が起こっている慢性心房細動であれば病院での検査でもわかります。ですが、心房細動が普段は出ていない人、つまり普段はきちんとした脈拍であるにもかかわらず、ふとした時に突然、心房細動が起こる発作性心房細動などはApple Watchがあればうまく捉えることができます。 病院の医療機器で検出できない場合、それが唯一の証拠になるのです。その情報を元に血栓ができにくくなる薬を始めるといった判断をすることもありますね。
目々澤先生はApple Watchの心電図機能を"気づきのツール"として使ってほしいと考えています。Apple Watchでは、心電図を計測・記録するとあとからPDFで書き出すことができます。それをプリントアウトして病院に持っていったり、対応している医療機関であればAirDropなどの機能を使って渡すだけでも情報として把握できるそうです。
また、血中酸素ウェルネスAppもあくまで大体わかる参考値としては意味があります。Apple Watchで計測した数値は、厳密な血中酸素飽和度ではないため、その1回だけを見て評価するのではなく、"経過を見る"、"普段と比べる"といった使い方で役に立ちますね。
▲目々澤先生がウェアラブルデバイスと、血中酸素濃度計で比較してみた結果
今後期待されるスマートウォッチの機能
最近では、スマホと連携できる血圧計なども登場しており、スマホアプリに日々の血圧を記録できます。これらも1ヶ月分ぐらいの変化データをかかりつけ医に渡すのがよいそう。数値から日常の変化を読み取って今後の対策をとってくれるそうです。 さらにスマートウォッチの機能として今後期待されているのが、血糖値の測定。すでに海外では製品が登場しており、先生もいくつかはすでに試しているそうです。
血糖値がわかると、糖尿病の早期発見ができたり、経過観察に役立ちます。また高血圧があると動脈硬化が進んで脳の血管が詰まったり、切れたりする可能性が高まり、心臓の場合は心筋梗塞や狭心症、また腎臓にトラブルが起きたりします。これらの血糖や血圧の測定がスマートウォッチでできるようになったら、いいですね。
目々澤先生がオススメする健康管理のアプリ
さらにスマートウォッチを活用する以外にも、スマホを使った健康管理が可能です。スマホで使えるおすすめ健康管理アプリを、目々澤先生に伺いました。
頭痛ーる
僕が診ている慢性頭痛に関しては、「頭痛ーる」というアプリがあります。突然来る低気圧や"痛み止めを持ち歩いてね"、といった情報を通知してくれるので、このアプリを使っている方は多いです。 慢性頭痛の患者さんには、頭痛の記録ができる「頭痛ダイアリー」というリーフレットをお渡ししています。頭痛の記録を見せてもらうことで、「この人は予防薬があったほうがいいな」とか「注射のほうがいい」といった判断もできます。こういった情報収集が大切です。
▼頭痛ーるのダウンロード先▼
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MeDaCa
ちょっと面白い取り組みなのが、血液検査の結果や処方箋健康診断などの診察情報を記録できるアプリ「MeDaCa」です。これはかかりつけ医が検査した、患者さんの医療情報を記録するパーソナルヘルスレコード(PHR)システムです。 検査データ、処方箋、レントゲン写真、MRI・CTなどのキー画像、さらには健康診断書などをアプリに登録してもらうことで持ち歩くことができるようになります。 普段、東京に住んでいる人が旅行で北海道に行ったときに、具合が悪くなり病院に行くことになった、そんな場合に北海道の医療関係者が素早く東京の医療機関の医療情報を確認できるようになります。 最新の医療情報が確認できるため、いちいち検査をし直す必要がなく、最適な診察や処方ができるそうです。
▼MeDaCaのダウンロード先▼
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カルテコ
より進化したサービスとして診療情報閲覧サービス「カルテコ」もあります。診察記録や日々のヘルスケア情報、MRIやCT、レントゲンなどの検査画像などが診られ、病院で記録された自分の身体情報がいつでも確認可能となります。 こういったサービスを導入している医療機関を利用することで、スマホから、さらに高いレベルで自分の健康管理ができるようになります。
▼カルテコのダウンロード先▼
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ユビーAI問診と、ユビーAI受診相談
コロナ禍で直接の問診による感染拡大を避けるため、Webでの事前問診も広がっています。目々澤醫院でも、AI来院事前問診「ユビー」を採用。 このユビーには、気になる症状について質問に答えるだけで関連する病気や対処法、そして医療機関を調べられる「ユビーAI受診相談」アプリもあります。スマホを活用することでより素早く、最適な医療が受けられます。
▼ユビーAI受診相談のダウンロード先▼
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最近では、生活習慣病対策としてスマホにプリインストールされている「ヘルスケアアプリ」などの活動記録を見せてくれる患者さんも多いとか。継続的に記録されたデータは診察の手助けになるそうですので、どのアプリを使っていいかわからない方はまずは「ヘルスケア」を使うところから始めてみては?
格安SIMのスマホとウェアラブルデバイスを連携できる?
これまでに紹介したヘルスケアアプリやウェアラブルデバイスは、格安SIMでも簡単に使うことができます。スマホとウェアラブルデバイスは基本的にBluetoothを利用して接続します。ウェアラブルデバイスの中には様々なセンサーが内蔵されており、計測したデータをメモリに記録。スマホとBluetooth接続したときに計測したデータを転送する仕組みです。
このため、格安SIMのスマートフォンでも問題なく利用可能。また、ヘルスケア関連のデータは容量も小さいのでクラウドと同期しても、データ容量にはほとんど影響しません。
なお、注意が必要なのがApple Watchです。Apple Watchには、通信機能を内蔵した「セルラーモデル」とiPhoneと連携して使う「GPSモデル」があります。セルラーモデルの利用にはキャリア契約が必須。格安SIMにはApple Watchのためのプランがないため、利用できません。格安SIMを装着したiPhoneと組み合わせて使う場合は、GPSモデルのApple Watchを選ぶことをオススメします。
まとめ:健康管理のためにスマホを使おう
スマホのヘルスケア機能を活用することで、より健康的な生活が送れるようになります。また、ウェアラブルデバイスを利用すれば、より多くのデータが取得でき、病気になる前の変化に気づくことも可能です。
デジタルデバイスと医療機関をうまく組み合わせていくことが、病気を防ぎ、健康に生活していくためのカギとなるかもしれません。この機会にスマホの使い方を見直してみてはいかがでしょうか?
文/コヤマタカヒロ
編集/株式会社LIG