端末分離プランが本格的に導入されそうなので、これからどうやって携帯端末を買えば良いのか聞いてみた。【専門家トリビア番外編】


はぁ~困ったなぁ......。

どうかしましたか?

あっ! あなたは!?
紳さん(左)
年収150万円のフリーライター。端末分離プランの本格的な導入を前になすすべもない、貧しき民の代表的な存在。好きな四聖獣は白虎。
ハヤSIM(中央)
電気通信事業にやたらと詳しい男。「毎月の携帯電話料金をなるべく安く抑えるコツ」を熟知しているため、富豪である。好きな四聖獣は玄武。
SIM太郎(右)
未来からやってきたデジタルサイボーグ。今回の記事では一言も喋らない。寝る前にアルミホイルを首に巻くことが唯一の趣味。
端末代金の割引が不可能に? 素晴らしき世界の崩壊

スマートフォンやインターネット通信に詳しくて、いつもトリビアを教えてくれる専門家の方じゃないですか。

イヤミですか? 僕の出番、まったくなかったじゃないですか。

「今回はトリビアとか欲しているわけではなく、悩みを解決して欲しいんです。実は、貧しくて困っておりまして......。

貧しさに悩んでいるんですか。

はい......。そして、その貧しさ故に今後、どうやってスマートフォン端末を買えば良いのか悩んでいるんです。

ほら、スマートフォン端末ってめちゃくちゃ高いじゃないですか。例えば、僕はiPhone X の256GB を使ってるんですけど......。

貧しいと言うわりには、高額な端末を使ってますね。

貧しいからこそ、せめて人目に触れるスマホくらいはと思いまして。

武士は食わねど高楊枝、と言いますもんね。最近、多いですよ。お金に余裕がなくてもスマホぐらいは良いものを持ちたいという人。

そうなんですよね。で、iPhone X は税込で15万円ぐらいしたんです。僕の年収が150万円ですから、10分の1ですよ。僕の所得でこんな高額な端末は買えないですよね? どうして買うことができたと思いますか?

契約しているキャリアが、端末の購入代金を実質的にサポートしてくれたからですよね? 月々の通信量を大幅に割引してくれたとか。

そうなんですよ!! 端末を買うことで、通信量を値下げしてくれる契約を結ばせていただいたんです。2年間の契約で7万円以上も割引になったので、実質的に支払う端末代金は8万円以下になりました。しかも2年間の分割払いで、月々の負担は約3,000円。これが通信量に上乗せされて毎月請求されるというだけで、15万円の端末をその場で手に入れることができたんです!

説明口調。

画面が大きい! カメラが高性能で写真が綺麗! 処理が早い! 最新端末最高! 割引最高!! 庶民の味方!!

よかったですね。これでインスタにタピオカミルクティーの写真をアップできますね。

そんな場末のOL みたいなことはしません。

(場末......?)

まぁ、契約をしたその場では1円も払ってないので、実質的に15万円の端末が無料(タダ)で手に入ったようなものなんですよ。

(タダにはなってないですけどね......)

で、ここからが本題なんですけど。

この割引があるからこそ、僕のような貧乏人がスマートフォン端末を買うことができていたのに、今後はこの割引が受けられなくなるらしいんですよ!!

なるほど。端末分離プランの導入について悩んでいるんですね。
端末分離プランってなに?

端末分離プランのせいで、端末代金の割引ができなくなるって聞きました。

そうなんです。端末購入を条件とする通信料金の割引や、通信契約を条件とする端末代金の割引は法律によって制限されております。

もぅマジ無理。。。。スマートフォンとか買えないじゃん。。

総務省が電気通信事業法を改正し、今後は法律によって分離プランが義務化されるようですね。

どうかしてる。割引があった方が僕たちは嬉しいに決まっているのに、なぜそれを法律によって制限するのか理解できない。

端末分離プランって、なんのために必要なんですか? 総務省は僕たちにイジワルしたいだけですよね?

いいえ、それは違います。端末分離プランの導入について、総務省はちゃんとした理由と目論見があって推進しているんです。

そんなはずはない。 ははーん、お前、さては総務省の回し者だな?

ひどい言い方しないでください。今からちゃんと説明するので。

話だけは聞いてやろう。

(急に態度がおかしくなったな。さっきまでは悩みを解決して欲しいって言ってたのに)

えーと、紳さんは割引があったから高額な端末が買えていたと発言をしていましたが、その割引をするのに必要な原資というのは、キャリアと契約している人々が払う月々の通信サービス利用料から捻出されるわけです。

そりゃそうですね。

その場合、サービスの割引を受けられるのは新規契約の際に端末を購入した方、あるいは機種変更で新しく端末を購入した方だけとなるのですが、それって不公平じゃね?という意見が多かったみたいなんです。

不公平ねぇ......、ビジネスってそういうものじゃん。新規に利用する人を厚遇するのは当たり前のような気がします。

さらにもう一つ、大きな問題点があります。それは現状のサービス利用料(キャリアの通信料金)の内訳が複雑でよくわからなくなっているということです。

ほう? 詳しく。

キャリア大手の3社(ドコモ、KDDI、ソフトバンク)はこれまでモバイル端末本体と通信サービスを実質、セットで販売してきたというのが現状なんです。新規の契約者を増やすために端末代金を大幅に割引したり、他社から乗り換えれば端末代金を0円(無料)にする、なんて派手なキャンペーンも流行ってました。

だからこそ、iPhone のような高額モバイル端末が日本で飛ぶように売れたわけです。モバイルビジネス市場が盛り上がったことは良いですが、その代わりにサービス料金の仕組みがすごく複雑になり、消費者の囲い込みも強くなっていきました。端末購入代金が割賦払いで通信料に上乗せされていたり、2年間の利用期間が前提の契約で通信料の割引がされていたり。期間内にサービスを解約した場合は違約金が発生するなど、他社への乗り換えがしづらい状況も問題視されていました。

うーん。それって良くないことなんですかね? ビジネス的な戦略の範疇では?

それに関しては色々な意見があると思いますが、モバイル通信は今や私たちの生活に欠かすことができない極めて重要なインフラです。こうしたサービスが消費者にとってわかりやすい料金体系になっているかどうかが大切なんです。現状のままだと他社との正確な通信料金の比較もできず、価格競争が行われず、社会的に健全とは言えません。

なるほど。庶民たちが支払っている料金をわかりやすくシンプルにすることによって、他社との比較をしやすくしたいんですね。

実現したいのは不公平をなくすこと、料金をシンプルにすること。

そして、総務省の本当の目的はその先にある通信料の値下げなんですよ。

なんですと!?
通信料の値下げで、世界水準を目指す。

2018年の8月、菅義偉官房長官が日本の携帯電話料金は世界の水準と比べて高いので、もっと値下げできるんじゃね? 気合いで2割から4割くらい値下げできるっしょ的な発言をして話題を集めました。

令和おじさんでおなじみの菅(義偉)内閣官房長官ですね。

こうした政治的な圧力を受けて、まずドコモが2019年に通信料の値下げをすると発表したんです。具体的には4000億円規模の顧客還元が行われると試算されています。

通信料の値下げが!? 政治家の発言、影響力強すぎワロタ。

そんなドコモの動きに合わせるように、KDDIとソフトバンクも新プランを発表しました。おそらくMVNOと呼ばれる格安SIM事業者もなんらかの料金値下げに対応せざるを得ないでしょうね。2019年、料金の見直しブーム到来ですよ。

で、このときに正しく各社の通信料金を比較して正当な価格競争が行われるためには、現状の内訳がわかりづらいプランのままだとダメなんですよ。

なるほど? あれ、ということは端末分離プランの導入を推進している総務省って、僕たち庶民のことを考えて......高すぎる料金を値下げするべく?

そういうことです。紳さんは、単純に割引が受けられないから損だ、デメリットだ、と目先のことだけを考えて騒ぎ立て、浅はかな思い込みで総務省を批判しているだけの無知な銭ゲバ中年なんですよ。

おい、言葉選び。

実際はどうでしょうか。端末分離プランの導入は消費者にとってデメリットですか? そんなことないですよね?

まぁ、そうですね。僕は誤解をしていたようです。通信料金の値下げを見据えての総務省の動き、素晴らしいと思います。

わかっていただけたようですね。
とはいえ、端末が高額なのは気になる。売れるの?

しかし、通信料金が値下げになるのはとても嬉しいことなのですが、端末の価格は変わらずに高額なままで、キャリアによる割引もされないということになります。気軽に機種変更などができなくなるのでは?

そうなんです。結果的に買い控えが始まって端末が売れなくなる可能性はあるのですが、一方で盛り上がる市場もあるんですよ。

豊洲ですか?

豊洲は関係ないですね。

タピオカミルクティーとチーズハットグ?

持って2年ぐらいじゃないですか、その市場。

ひどい。田舎ではこれからブームが始まるって言われてるのに。

それはさておき、中古端末の市場が大いに盛り上がるのではないか、と予想されているんです。

なるほど。今後はいかに安く、お得に済ませるかということで中古の取引が増えるということですね。家電量販店やインターネットショッピング、メルカリなどで端末を手に入れる人が増えるかもですね。

キャリアの動きはどうでしょうか? 新品の端末が売れにくくなることで、今後は仕入れ数を減らしたり、いっそのこと端末の販売をやめて契約関係だけを取りまとめるお店に変わったりするのでしょうか?

いわゆるキャリアショップ、販売代理店の動きについてですね。やはり、いくら売れにくくなるとはいえ、端末を在庫として置かなくなるということはないと思います。端末を自由に選んで買えて、その場でキャリア契約ができるということが強みですし、集客に影響しますからね。

そっかぁ。じゃあ、今までとそんなに変わらないかな。

それと、制限されるのは端末購入を条件とする通信料金の割引や、通信契約を条件とする端末代金の割引であって、それ以外の割引はしても良いですから。キャリアごとに新しい、独自の割引戦略で顧客の奪い合いが行われるかも知れません。キャリア契約や端末購入のインセンティブとして、なんらかのポイントを付与するポイントバックサービスなども有力です。

15ポイント貯めると、白くて無機質なお皿がもらえるとかそういうやつですね。

某パン祭りみたいなものは開催されないと思います。普通にTポイントとか、楽天ポイントとか。あるいはPayPayやLINE Payなどに還元したりとか。

ふ~ん。各社、どんな戦略で来るのか楽しみですね。とにかく僕は得がしたいし、安く買いたいし、ポイントがたくさん欲しい。世の中の動向を常に観察し、なにかいい情報があったら即座に教えてくださいね、ハヤSIMさん。

(銭ゲバ中年なのは変わらないんだな)
まとめ
僕たちにとって損しかないと思われていた、端末分離プランの導入。
しかし、実際は高すぎる通信料金を値下げするための布石として行われる、とってもお得な話だったようです。
一方、これまでのような大胆な割引がされなくなる、高額なスマートフォン端末。これに関しては中古市場が盛り上がるという予想です。
今後の通信料金について、各大手キャリアはきっと、がんばってくれることでしょう。大手キャリアのみならず、格安SIMなどのMVNOもがんばってくれるはずです。
その中でも、僕は個人的にBIC SIMに注目しています。よくキャンペーンとかやってて、しかるべきタイミングで加入すると1年間割引が続いたり、通信容量を増やすというサービスをやっているのでお得感があるなって思ってます。まぁ、そんなキャンペーンなんて関係なかったとしても、ビックカメラのヘビーユーザーである僕にとってはBIC SIMがモストフェイバリットなのは疑いの余地がありません。そういえば偶然にもこの記事はBIC SIMさんからお金をもらって書いているんですけど、ぶっちゃけそれはたまたまなだけで、お金をもらってるとかそういうのを抜きにしても僕はBIC SIMに注目していたと思います。本当に。いや、これはマジで。

ハヤSIMさん、本当にありがとうございました。大変勉強になりました

今回の端末分離プランの件もそうでしたが、実は人間にとって電気通信というのはオルタナティブな文化なんですよね。私もその文化に陶酔する1人の求道者として、新しいライフスタイルの確立を目指し、ただのインフラとしてのモバイルビジネスを追求するのではなく、もっと前衛的でダイナミックな、新しい価値をもった何かを生み出したい。それは、ものすごく急なサイクルで流行り廃りが訪れるこんな世の中に対し、カウンターカルチャーとしての確固たるモバイルシーンを誕生させるということ。そんなことを考えながら送る日々、2019年夏、ハヤSIMは人々の心を揺さぶるようなパフォーマンスを見せたいと考えています。

すみません、それを端末分離プランのようにわかりやすく、シンプルにまとめるとどういうことなんでしょうか?

がんばります、ということです。

わかりました。では、がんばってください。
結論:端末分離プランの導入は、通信料金値下げのための布石として行われる料金をわかりやすくするための施策